写真の依頼があって
写真を撮った。
バーとフリーペーパーの写真。
くだらない写真だ。
当然無料だろ?
という顔をしている。
いいけど。
別に。
スペック悪くて気持ちものらなくても文句言うなよ。
俺は自分が最近イヤだ。
なんにもしたくない。
アタボウのことを思い出す。
うまくいっていたときは、最高に幸せだったな。
善福寺公園に行ったとき、
すごく楽しかった。
好きだったんだろうな。
とにかく気は合った。
ダメになったのは、お互い甘えん坊だっただけ。
アタボウは最高だったな。
そう思う。
もう無理だけど。
もう無理だろうけど。
寂しい夜はちょっとつらい。
一人はちょっとつらい。
友人の日記を読んだ。
家族のことが書いてあった。
すごく、よかった。
弱気になってしまう。
男ってなんだ。
アタボウの撮った写真に映っている僕とアタボウ。
すごく幸せそうだ。
昔、ノンちゃんが見せてくれた
ノンちゃんの若かりし頃と当時の彼氏の写真。
「なんでこんな幸せそうな二人がうまくいかなかったんだろう…」
と悲しくなった。
それが僕とアタボウの写真にも
同じように感じられた。
すごく幸せそうだった。
アタボウつらかったろうな。
昔はあんなに一人の夜が好きだったのに。
高校生のとき。
音もしない。
誰もいない。
ただ一人の夜。
あの頃、僕はなにを考えていただろう。
あの頃から何も変わっちゃいない気がする。
少し人生がわかったつもりだけど。
なにが正しくてなにが羨ましいのか。
僕は何故それでも生きるのだろう。
アタボウはただ普通の生活がしたい。
そう言っていた。
もう戦う気力もない。
それはもう経験したことだったはずなのにな。
安心。
それはどこまでいったら手に入るのだろう。
安心。
みんな欲しくて欲しくてたまらないものだ。
安心。
手に入るとありがたみを忘れる。
安心。
空気みたいになってしまうんだろうな。
アタボウごめんな。
忘れないけど。
おれはアタボウを忘れない。
「一人で生きてるような顔をしている」
なんのための家族だろう。
どこに行きたい?
おれは。
小説家になりたいんだろうな。
本当は、やっぱり。
書ける自信もなにもないけど。
生きてるな。おれは。
また、少しやつれた顔になるかもな。
でも、昔よりはましだ。
一人ぼっちじゃない。
友達もできた。
夢もある。
できることも少しだけ増えた。
知ったこともたくさんある。
知りたいこともたくさんある。
言いたいことは何もないけど
助けたい人もたくさんいる。
生きたい理由なんてないけど
生きることを辞めようとは思わない。
アタボウと結婚してたらどうなっていただろう。
日々、幸せだったろうか。
アタボウを幸せにできただろうか。
クラの家族みたいになれただろうか。
素敵な家族になれただろうか。
センチメンタルな気持ちは
嫌いじゃないけど
やっぱりいつまで経っても少しつらい。
誰だって寂しいのだ。
みんなそうだった。
東京に来てから
付き合った人、関わった女の人はみんな、
そうだった。
寂しい。
決して顔には出さないけど。
純粋に簡単に気持ちも知らず
僕は土足で踏み込んだ。
女の人を幸せにしてやれよ!
世の男たちは一体なにをやっているのだ。
僕は人のことは言えないけど。
みんな自分の欲望最優先。
男も女も
自分の願望最優先。
男の欲望と
女の願望と、
そうそう噛み合わない。
ずっとそばにいて。
女は言う。
他の女ともやりたい。
男は言う。
神様なんていない。
こういうのを決めたのは人間。
こういう本能で行こうと決めたのは人間。
そして僕も人間。
いつか死ぬ。
あと、60年くらいで死ぬ。
死ななくても元気に動きまわれなくなる。
その間、あと何人の寂しい人を見るだろうか。
俺が変わればそういう人にも合わなくなるかもしれない。
そんな気もする。
何故一人は寂しいのか。
これは考えたことなかった。
実際は誰かがいても寂しい。
誰かに愛を注がれないと寂しい。
必要とされないと寂しい。
僕を必要としている人は一体何人いるだろうか。
そりゃあ、たくさんの人に愛されて生きるのはそれは幸せだろうよ。
たった一人でも寂しくないのは一体どんな境地なんだろう。
無人島で出会った人は動物と友達だった。
とあいつは言っていた。
あの人は動物がいなくなったら寂しいんだろうか。
それとも風とか空気とかと友達になってさえしまうのだろうか。
それとも神でも創って寂しさを超えるのだろうか。
寂しい。
慕情。
静寂。
郷愁。
人間はどこへ向かうか。
イチローの顔つきは相当なものだった。
背負い。
背負うものがあると男は変わる。
僕はなにも背負ってない。
背負いたい。
なにを背負おうか。
アタボウを背負うことから逃げた。
アタボウがどうなってもそれでも背負う。
俺はどうなってもアタボウを背負う。
難しいことだ。
若いから。
おれはどうなるかわからん。
背負った方がよかったのかもしれないし、
どう転がるか人間わからん。